非線形科学セミナー

日時:2021年3月26日 16:30 – 18:00
講演者:Luis EC Rocha(Ghent University)
タイトル:Sex-workers, dairy cows and hospitalised patients
アブストラクト:Social interactions can be described via networks by associating nodes to individuals or animals and links between pairs of them to represent specific social relations. The dynamic structure of such social networks reveals patterns of interactions and provides a global picture of the inter-dependencies between the parts of the social system. In this talk, we will briefly discuss the dynamic structural properties of 3 social networks, a sexual contact network between sex-workers and their clients in Brazil, the evolution of social ties between confined dairy cows in France, and proximity interactions between hospitalised patients in Sweden. We will also briefly talk about some implications of these structures on the regulation of infectious diseases.

日時:2021年2月15日 15:00 – 16:30
講演者:西口大貴(東京大学大学院理学系研究科)
タイトル:電場駆動ヤヌス粒子で探るアクティブマターのscaling則:鞭打ち運動・双翼状枯渇領域・長距離秩序相
アブストラクト:アクティブマターにおいても普遍法則が存在することを、統計物理学は明らかにしつつある。本講演では、実験的に普遍法則を探索するツールとして、交流電場により駆動する非対称コロイド粒子(ヤヌス粒子)を紹介する。このヤヌス粒子実験系では、交流電場の周波数・振幅や水中のイオン濃度の調整を介して、粒子の遊泳速度・推進方向・相互作用を詳細に制御できる[1,2]。その結果、理論模型や他の実験系でも見られる多様な振る舞いを実現することができ、種々のscaling則の検証やアクティブマター系に特有の相関の発見に繋がってきた。今回は、以下の3つの運動状態に関する研究を紹介する。
(i) まずヤヌス粒子の相互作用と駆動原理に関する導入として、ヤヌス粒子間に引力が働く領域で自発形成される鎖状構造を扱う。この鎖状構造が示す、鞭毛のような鞭打ち運動の振動数 vs 駆動力のscaling則の測定により、鞭毛などアクティブフィラメント一般に関する理論予測を実証するとともに、ヤヌス粒子の相互作用についても実験的証拠が得られた[2]。
(ii) この理解に基づいて相互作用を制御することにより、粒子間に引力も斥力も配向相互作用もほとんど働かない領域において、粒子が自由に動き回る「アクティブブラウン粒子」模型に相当するダイナミクスを実現した[3]。本研究では、平衡液体の構造論において重要な役割を果たしてきたpair correlationのアクティブマター系における基礎的な理解を深めるため、相分離や集団運動などの多体現象が生じる密度よりも十分低密度の希薄条件下での二体相関に着目した。結果として、基準となる粒子の進行前方では衝突によって他の粒子の存在確率が上がるという予想通りの結果が得られる一方、存在確率が下がる枯渇領域は、粒子の真後ろではなく、粒子の両脇に双翼状に現れることを発見した。この性質は、アクティブブラウン粒子模型の数値計算においても得られ、解析的にその枯渇領域が冪減衰することも見出した。粒子のアクティビティーの関数としてpair correlationの形状を特徴付け、その相図を完成させた[3]。
(iii) さらに相互作用を制御し、粒子間に引力があるものの流体相互作用のために鎖状構造は作れないように微調整することで、Vicsekモデルのように長距離秩序と巨大な密度揺らぎを示す群れ運動状態も実現できる[4]。ヤヌス粒子の向き(polarity)と速度を独立に検出することで、これら2つの量が縮退しているVicsekモデルやその連続場理論では理解できないpolarityや速度の相関も得られている。これら主要な結果について、理論と比較しつつ、紹介する。

[1] D. Nishiguchi, M. Sano, Phys. Rev. E, 92, 052309 (2015)
[2] D. Nishiguchi, J. Iwasawa, H.-R. Jiang, M. Sano, New J. Phys. 20, 015002 (2018)
[3] A. Poncet, O. Bénichou, V. Démery, D. Nishiguchi, Phys. Rev. E 103, 012605 (2021)
[4] J. Iwasawa, D. Nishiguchi, M. Sano, under review, arXiv: 2011.14548 (2020)

日時:2020年12月1日 13:00 – 14:30
講演者:飯間信 氏(広島大学 大学院統合生命科学研究科)
タイトル: 大規模複雑系の位相縮約
アブストラクト:非圧縮流体系は大規模(自由度が無限大)かつ,ヤコビアンが陽に求められない,境界条件は一般に複雑,などの特性をもつ複雑な系(大規模複雑系)と考えられる.このような場合の位相縮約は難しいため,流体現象をリズム現象として解析することはいくつかの限定的な場合に限られていた.本セミナーではこういった大規模複雑系にも適用可能な位相感受関数の計算方法を提案する.この方法は系の時間発展のアルゴリズムのみで構成可能であり,かつ物理空間の一部の領域だけに着目した位相感受関数が計算可能である.手法とその特性を説明したあと,反応拡散系(進行パルス,breathing解),流体系(カルマン渦,平板翼周りの流れ)への応用例を紹介する.

日時:2020年9月23日 15:30 – 17:00

講演者:狐崎創 氏(奈良女子大学研究院自然科学系物理学領域)
タイトル:成長する紐や膜の形~縮約が役立ちそうな2題~
アブストラクト:
これまでに行った大学院生との共同研究の中から”成長する形”を扱った未完のテーマを2つ紹介したい。1つは粘性流体中で成長する弾性鎖の形についての数値的な研究で、自然長が成長するバネの鎖モデルからスタートすると、鎖の性質によって連続極限を持ち座屈する場合と折れ曲がりが至る所で起きる場合があることがわかる。また1つは、溶けたパラフィン中に冷水が流れ込んだ時にできる固体膜の成長の実験で、薄膜内部での圧力勾配がパターン形成を支配することで通常のviscous fingering とは異なる樹状成長が見られる。それぞれ、紐が伸縮に対して硬い極限、薄膜が動きにくい極限を考えると、縮約法の少し変わった応用として理論的に有効なアプローチができそうなことがわかった。