第2回数理モデリングカフェ (2019/12/4)

スピーカー: 西成活裕 氏(東京大学 先端科学技術センター 教授, 東京大学 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授)

タイトル: 渋滞の数理モデルから社会実践へ

アブストラクト:渋滞は車だけでなく、人の流れや、物流、そして情報通信にも見られ、さらには我々の体内でも起こってそれが病気の原因にもなっている。これらの複雑系を広く捉えて数理モデルにより抽象化し、渋滞発生のメカニズムの解析や渋滞緩和方法を考える「渋滞学」を紹介する。数理モデルは本当に現実を表しているといえるのか、そしてどのように検証すべきかなどについて様々な具体例を通じて考えていく。また、こうした基礎から応用、そして社会実践まで行う研究の難しさについても議論したい。

開催報告: 数理モデリングカフェ 第2回のスピーカーは、西成活裕先生にお願いしました。今回は、私たちがゼミ生として参加するというスタイルでトークをお願いしました。
今回は42名の方々に参加いただきました。
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前半は、渋滞学について研究紹介をしていただきました。ASEPモデルの美しさに感銘を受けて、数学を使った渋滞研究を始めた西成先生。まずは、渋滞モデルの統一理論 (Nishinari and Takahashi, J Phys A, 1998; Matsukidaira and Nishinari, PRL 2003) を紹介されました。渋滞モデルは、偏微分方程式 (バーガーズ方程式: Burgers 1948)、セルオートマトン (Wolfram, 1994)、OVモデル (Bando et al., PRE, 1995) の3つがあるが、渋滞という現象は1つです。この研究では、超離散化と美しい恒等式を駆使して、3つのモデルの等価性を示されました。
数式はホワイトボードで解説。
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次に、渋滞モデルについての相図についてのモデル研究、働きアリは渋滞を起こさないという研究 (John et al., PRL, 2009)、細胞内の分子移動 (Nishinari et al., PRL, 2005) や酵素反応 (Ezaki et al., PRL 2019) における渋滞の研究など、渋滞というキーワードでさまざまな現象をモデリングできることを実感しました。
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後半は、研究人生を振り返っていただきました。美しい数理とこれまで数理と無関係であった分野の接点の研究をしたいと考え、29歳で渋滞研究を始める決意をされたそうです。
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そして, 今では渋滞コンサルタントに (笑)
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最後に、ゼミ生 (参加者) へのメッセージをしていただきました。
1) 若いうちに強い武器を身につけろ。
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2) 失敗からしか学べない。
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3) 一番大切なことは、どうして数理モデリング (研究) をするのかということ。
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研究内容だけでなく、西成先生の研究哲学からも大きな刺激を受けたカフェになりました。西成先生、ありがとうございました。調整してくださった柳澤さん、協力してくださった西成ゼミの学生の皆様、そして参加者の皆様、ありがとうございました。 Group

オーガナイザー: 小林 亮太、青木 高明 (香川大)、小山 慎介 (統数研)、柳澤 大地 (東大)、中尾 裕也 (東工大)